社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


 
 誕生日がきてまた年をとり、しぶしぶ現況届を出してきた

 Tomeさんの誕生日は1月2日である。何回目かはもう忘れたがまた年をとってしまった。
 「年齢計算ニ関スル法律」(明治35年12月2日)によると、「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」、「同2項 民法143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」とあり、その民法143条2項によると、「週,月又ハ年ノ始ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ其期間ハ最後ノ週,月又ハ年ニ於テ其起算日ニ応答スル日ノ前日ヲ以テ満了ス。但月又ハ年ヲ以テ期間ヲ定メタル場合ニ於テ最後ノ月ニ応答日ナキトキハ其月ノ末日ヲ以テ満了日トス」とごたくが書いてある。
 早い話が、私の年齢は「出生の日である1月2日より起算し、出生日の応答日の前日(1月1日)の満了をもって年齢が加算される」 つまり、法律上は誕生日の前日が終わったとき(1月1日の深夜12時)にひとつ年を重ねるのである。初夢は、年をとった直後にみることになる。
 平成14年に、この年齢の計算のことで、まじめな質疑応答が国会でなされたようである。
 質問者が主張するには、
@4月1日生まれの子供が前年度に生まれた子と同学年になるのはおかしいではないか。
A老齢基礎年金の受給権は、65歳に達した日の属する月の翌月分から発生するが、1日生まれの人に限って、誕生日の属する月当月分から、受給権が発生する。これは1日生まれの人間だけが、期間的な利益を受けることになるのではないか。
B同様にして、老人保健法にる医療についても「70歳に到達した日の属する月の翌月(その日が初日であるときは、その日の属する月)から行う」とあるのはおかしいではないか。
C「高年齢者雇用安定法」に基づき、65歳まで働きつづけることができる環境整備を求める広報活動を厚労省では行ってきた(注:18年度からは段階的に義務化される)が、65歳までとはいかなる時点をさしているのか。(答えは、65歳誕生日の前日までである) 社会常識から考えれば、65歳いっぱいまでという趣旨と理解されているのではないか。等々
 たまには、国会でのやりとりを勉強するのも社労士受験に役立つなと変なところで関心した。
 ところで、Tomeさんが小学生のあるときまでは、「日本国民は全員1月1日で年をとる」ものと決まっていた。ところが、「年齢のとなえ方に関する法律」ができ、
 「昭和25年1月1日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律の規定により算定した年数によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない」となった。つまり、年齢のとなえ方も個人の「心がけ」の問題なのである。
 よって、いまどき数え年といっても通じない者が多いということは、国民の「心がけ」がよくなってきたせいらしい。
 これまでが、「まくら」で今日の本題は「現況届」である。
 年金受給者が誕生日を迎えると、その末日までに「現況届」を出さないといけなことになっている。これを怠ると年金が「一時差止め」になる。
 そもそも「現況届」とは「私はまだ死んではいない。年金の支給をお忘れなく」という趣旨のものである。あわせて、妻などをまだ養っていますという加給年金対象者の確認も兼ねてはいるが、 これも、「妻もまだ生きている、離縁もしていないぞ」と同義語である。
 事実、平成10年1月までは市町村長による「生存証明書」を添付しなければならなかった。
 この現況届は自筆が原則で、しかも会社勤めをいているか否か、奥さんがいるのかどうか、その年齢は?等々の個人情報を葉書に書かなければならない。しかも、50円切手は自分持ちである。よって、出す側ではかなり不評なのである。
 生存や年齢を確認するだけなら「住民基本台帳ネットワーク」でできるはず。このため、私が併給している「退職共済年金」では、「現況届」は不要ですよという通知がきた。
 最近、社会保険庁もやっと重い腰をあげ、「現況届等につきましては、個人情報保護の観点から平成17年9月より目隠しシールを同封する予定です。また、平成18年度中には、住民基本台帳ネットワーク等を活用して生存確認を行えるようにすることとしており、これにより生存確認が行える方については、現況届を廃止することとしています」と発表した。
 しからばやむをえないと観念し、これが最後になることを祈りつつ、50円切手を貼り付けた「現況届」をポストにいれてきた。  

(No7.平成18年1月11日)

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