社会保険労務士福留事務所(Tome塾主宰者) 


   
 2007年問題(熟年離婚 ・年金分割問題)

 2000年問題の話はついこの間のような気がする。何しろ、西暦年号を2桁表示したコンピュータでは、99年(平成11年)大晦日から一挙に00年(明治33年)の元旦に戻るみたいなもので、世界中が大騒ぎした。
 最近、年金関係者の間で水面下でささやかれているのが2007年問題である。といっても何のことはない。熟年離婚予備軍と呼ばれている人々にとっては周知の事実であり、期待を持って2007年4月1日を待ち焦がれているとか。
 16年の年金大改革国会では、「未納3兄弟」なる言葉だけが飛び交い、それを言いたてた民主党代表をはじめ、大物官房長官などが未納問題で辞任に追い込まれた。本質的な議論をする場をつくれなかった政治家やマスコミ関係者は猛省すべきであった。
 この結果生まれた改正厚生年金法78条の2によると、「平成19年4月1日以降に離婚した場合、結婚期間中に相当する年金額は、夫婦合計額の半分づつまで分割して受け取ることができる」とある。もちろんこれは、当事者間での話し合いあるいは家庭裁判所の決定によって年金の按分方法について合意が成立した場合であり、合意内容によっては必ずしも半分づつとはいかない場合もありうる。
 この改正は、特に「ミセス消防(かじ専門業、即ち専業主婦)」にとっては、大変な朗報であるらしい。
 ちなみに「Tome」さんの場合、厚生年金加入期間427月のうち378月は分割対象で、この部分は半分になる可能性大。基礎年金部分は二人とも納付済み月数がほとんど同じである。これに独身時代分として、私には約2年の共済組合期間、カミさんには約2年の厚生年金期間がある。要するに、離婚すると年金はほぼ半分づつ受け取ることになる。
 ところが、我が家のカミさんの場合、この話はどう考えても魅力的ではない。というのは、私の年金は全額彼女が自由に使っている。たとえ家計費であったとしても決裁権限はすべて彼女にある。これが一挙に半分になることはとても耐えられない。
 と私は想像している。多分、本当である(と願っている)。
 年金分割にはまだまだよく調べておくべきことがたくさんある。
 今日のテレビで55歳の主婦が、平成19年4月を手ぐすね引いて待っているとしゃべっていた。今離婚したからといってすぐにもらえるものではない。自分が65歳になってからの話であるが、このことを理解しているのか心配になってきた。
 さらにいえば、65歳になった時点で、300月以上の保険料納付済月数がなければ、絵に描いた餅になってしまう。これを満足していない人は、離婚した後、自分で国民年金あるいはOLになって厚生年金の保険料を収めていかなければならない。貰うのではなく、払うのですよ。
 奥様にとって一番得なのは、自らは保険料を支払わない3号被保険者になり、旦那に支給される年金の全額決済権限を取得し、旦那が亡くなった後は、旦那の老齢厚生年金の4分の3を遺族年金として受け取ることではないか、とつくづく思う。
 「そういう心がけでいるから、奥様が真剣に年金分割離婚を考えるのだ」と、どこからか神様の声が聞こえてきた。
 2007年問題は、結構奥が深いようだ。

(平成18年2月16日)

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